シン・クエストカフェ Vol.01
KEIICHI TAKAHASHI
インタビュー/和田達哉(クエストカフェ)
髙橋啓一さんは、岡山、広島、山口、香川県に10店舗を展開する回転寿司チェーン「すし遊館」を経営する会長さんです。
髙橋さんは、お寿司屋さんを経営する中で、ある時、知人の焼き肉屋さんから狂牛病問題があった時、お客様への安全・安心のお肉を提供することへの思いの話を聞きました。
その頃、中国産の工業用のお米が流通ルートを経て、新米として販売されたと言うニュースが話題になり、これまでもお店で扱う食材には徹頭徹尾、品質にこだわってきた髙橋さんですが、同様にお寿司屋として、お客様にさらに安全・安心の食材を提供することが、改めて重要であると再認識したのです。
その頃、2009年、現在のすし遊館の社長である息子さんの髙橋栄二社長が、青森は弘前の「奇跡りんご」で有名な自然栽培農家/木村秋則さんのところで自然栽培の研修を受けていたことから、すし遊館で提供するお米をすべて、肥料も農薬も、除草剤も使わない、安全・安心の木村さん方式の自然栽培で作るお米で提供しようと決めました。
そこから、岡山で有志のお米農家さんに集まっていただき、木村秋則さんを招いて、自然栽培によるお米作りの指導をしてもらい、岡山での自然栽培によるお米作りがスタートしました。
その後、NPO法人岡山木村式自然栽培実行委員会を立ち上げ、現在では、100戸の米作り農家さんが集まる組織へと発展しています。
海外からの低コストの食料が輸入され、日本の農業は生産コストなどから輸入品に太刀打ちできず、厳しい経営を強いられています。特にお米は、近年の需要の低下と生産者の高齢化、また、お米の買い取り価格が低くいために、経営的に成り立たなくなり、廃業するか農業法人に委ねられつつあるのが現状です。
生産性アップのためには、どうしても化学肥料や農薬を使う慣行農法が主体となっています。さらには、ウクライナでの戦争のために化学肥料の原料が手に入りにくくなり、世界的に肥料価格が大きく高騰していることや石油燃料価格の高騰など、農業経営に追い打ちをかけているのです。
化学肥料や農薬が地球環境にも負荷をかけていることはあまり理解されていません。特に、農薬のネオニコチノイドにより、ミツバチをはじめ、多様な昆虫たちが減少し、また、用水路へ農薬が流れ込むことで、エビや水生昆虫などが減少し、河川の生態系がバランスを崩しています。
また、2009年アメリカ海洋大気局(NOAA)は、農薬・化学肥料・家畜の排泄物に含まれる窒素肥料をまいた農地などから発生する亜酸化窒素ガスが、地球のオゾン層を破壊する要因であると発表しました。亜酸化窒素ガスは地球温暖化の原因の一つで、二酸化炭素の約310倍の温室効果があると言われています。世界中で使用される農薬や化学肥料について、こうした視点でも考える必要があるのです。
自然栽培は、環境問題に配慮する農業としても高付加価値で、価格は高めでも、近年、食への安全・安心、環境保護を考える人々からのニーズが年々高まっています。
付加価値の高い自然栽培のお米は、お米作り農家にとっても、NPO法人岡山木村式自然栽培実行委員会により、一般のお米よりもかなり高く買い取ってもらえるため、特に小規模の農家さんにとって、自然栽培に切り替えていくことは、これからの農業にとって、人にも環境にも優しい、ひとつの新しい道ではないかと思います。
自然栽培の田んぼの稲の根は、栄養を得ようとしっかり根を大きく張ります。そして、その稲の株はどっしりとたくましく育つので、台風が来ても倒れることがありません。生きようとする力が強いので、生命力に溢れたしっかりした稲になります。
自然栽培の田んぼは、農薬、肥料、除草剤を使いません。そのため自然本来の生態系が戻ってきます。田んぼには、アメンボやミドリムシ、カエル、トンボ、アシナガグモなど様々な虫や生き物たちが共存、生息し、全体がつながって、ひとつの命を形成します。
肥料を使わないので農薬がいらず、農薬を使わないので生態系の環が壊れることがない、 だから生態系の環が生き生きと機能し、肥料もいらないという“美しい循環”が生まれるのです。
お米は、単に安全・安心というだけでなく、自然本来の力強い稲が育ち、そんな稲がエネルギーに満ちたお米をたわわに実らせます。
自然栽培について、もっと詳しい内容が知りたいという方は、ぜひ、こちらをご覧ください。
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