燃え尽きるまでやり抜いた先の未来は?

ワダ:
今回のクエストカフェは、いい会社づくりのビジネスコンサルタントで、経営者やリーダーをサポートする株式会社ライフスタイルプロデュースの代表、荻野淳也さんに登場いただきました。今日は、よろしくお願いします。
荻野:
はい、お願いします。
ワダ:
荻野淳也さんとは、仲良くさせてもらっていて、いつも荻ちゃんと呼んでいるので、ここでも荻ちゃんでいきますか?・・・笑
荻野:
はい。それでよろしくお願いします・・・笑
ワダ:
いま面白いプロジェクトをたくさんやっていて、いろいろと紹介して欲しいんだけど、まず、荻ちゃんの会社「株式会社ライフスタイルプロデュース」。これは、ビジネスコンサルティングと企業経営者を中心としたエグゼクティブのコーチング。そして、今話題の投資会社「鎌倉投信」の社長鎌田さんたちが理事をしている 「NPO法人いい会社をふやしましょう」の発起人をしている。
荻野:
あと三つくらいやっていて、いま、ちょっと力を入れているのが「一般社団法人マインドフル・リーダーシップ・インスティテュート」というのを去年の10月に立ち上げました。それから妻が、去年の3月に「株式会社ブラウンシュガーファースト」というオーガニックフードの会社を立ち上げたので、その副社長もやっています。
さらに「NPO法人 カナエール」という児童養護施設の子どもたちを支援をするという、その副実行委員長をやっています。
ワダ:
あとは、僕も幽霊部員でいる・・・笑 「いい会社経営者ダイアログ」や僕も関わっている「遊識者会議 in TOKYO」。それに「禅のイベント」もやってたりね・・・
荻野:
それもやっていますね。多岐にわたっています・・・笑
冬は、味噌づくりワークショップとかやりますけどね。
ワダ:
もう、十分でしょう・・・笑
本当によくやると思います。僕なら、混乱してしまう。でもやっぱり、いま一番力を入れているのは、いまムーブメントを起こしつつある『マインドフルネス』だね。それは後でいろいろお話を聞くとして、これまでの荻ちゃんの活動について、話を聞かせてもらえますか。
荻野:
そうですね。
僕は社会人として、最初は外資系のコンサル会社で、コンサルタントをやっていて、人事制度とか戦略を推進するような仕組みを、色々な大手企業に導入していました。その後にIPO(株式公開)ブームになりつつあり、僕はブーム好きだったので(笑)外資系コンサルブームの起こる2、3年前に転職したんです。合コンへ行ったらもてるかなくらいの感じです・・・冗談ですが、笑
ワダ:
いくつくらいの頃?
荻野:
25歳くらいですかね。
ワダ:
荻ちゃんにも、そんな上っ面な時代もあったの?・・・笑
荻野:
もうバリバリ薄いですよ・・・笑
ワダ:
想像できないな〜。
荻野:
大学生時代から欲しかった赤いボルボを手に入れて、かわいい彼女を連れて、まさに2005、6年の頃、IPO ブームがあって、村上ファンドとかホリエモンの時代です。
外資系とかに行っていた人間が起業し始めて、いいなと思い、僕も一攫千金狙いたいというのがあって、たまたまある流れがあって、未上場で、上場目指しているという会社からヘッドハンティングがかかり、上場事務担当者として転職したんです。そこでマネジメントをやっていたわけですけども上場も経験できて、僕もまだ30歳前後だったので、24時間働けますか?という感じで働いていたわけです。
その会社に転職してから上場するまで約1年ちょっとあったんですが、その1年間と上場してさらに数カ月は1日も休んでいないんですね。土日も休んではいるのですが、何かしら出社しているだとか、3、4時間は必ず仕事をしている状態だったですね。
ワダ:
あの頃、本当にリゲイン飲んでいたよね。
荻野:
飲んでいましたね。コンビニでそういうドリンク買っていて。そんな時期がありましたね。
僕が変わるひとつの大きなきっかけは、そこで上場した後に、燃え尽き症候群になったんですよ。
社員150人〜200人位いたんですけど、当時のベンチャー企業って、結果的に上場を目的にして起業している会社がいっぱいあって、僕がいた会社も実はそうだったんですね。それで上場しました。その会社は創業から2年11カ月で上場したんですけど。
3年以内の上場って、結構大きな注目を浴びる上場で、まさに上場ブームの真っただ中に出たので、売り出し価格、初めはこれくらいの値がつくであろうという想定価格約40万で売りに出したのが、280万ついちゃったんです。
ワダ:
ひぇ〜、すごいね!
荻野:
もう3日間くらい値がつかなくて。それは当時、今でも記録かもしれないですよね。そういう真っただ中にいて、注目も浴びるし、僕も経営企画室長みたいな、IRの担当をやっていたので、日経新聞からインタビューを受けたりとか、いろいろと取材を受けたりだとかして、なんか注目を浴びてるな〜みたいな・・・
まあ、そんな時代もありました。だから、ひとつ若いころって新聞に載るような仕事をしたいとか思う時期もあって、新聞とかに自分の仕事が載りたいみたいなことも一瞬考えたことがあって、ひとつ達成しちゃったみたいな、そういうこともあったわけですね。
でも上場したら、もう次の目標が見えなくなったんですよ。上場が決まった瞬間はすごい達成感で、ほんとにアドレナリンが出るってこんな感じなんだみたいな、あ〜よかった〜ってみんなで達成感を味わっったんですけど。
ワダ:
その時、経営者は、創業者である社長とか経営幹部も同じような感じになっちゃったの?
荻野:
そう思います。振り返れば、次どうするとかないですよね。もちろん、毎月の予算があって、上場したからIR上、中期の経営計画で、今度は数字のプレッシャーがどんどんきつくなっていくわけですよ。
経営陣からするともう株式市場に出している数字の約束は絶対なんだというプレッシャーがどんどんかかってきて、でも次に燃えていくような上場達成を超えるような目標がないわけです。その中でも自分は経営幹部として、社員に対しては、次はこれを目指すんだ、みたいな絵を描いていて、でも自分もモチベートされないのに、なんかこう変だな〜みたいなところから、徐々に自分の内側と外側が乖離していくような体験を味わっていったのです。
上場すると、自分と同じような、新しい有能な人がどんどん入ってきて、自分の仕事が徐々にシステム化されていって、仕事が少なくなっていくんですね。より深いところにはなっていくんですけど、何か自分の役割が薄くなっていくみたいな経験をしながら。
入社して2年くらいして、会社へ行くのが精神的につらくなってしまって、電車に朝乗るんだけれども、上りの電車じゃなくて、下りの電車に乗りたいな、みたいな。
ある程度部下もいて、プロジェクトも任されていて、いろいろ仕事は分散していくのだけれども、まだどんどん仕事は降ってくるみたいな。
器用貧乏なので、社内でこの仕事ができる人がいないと、全部僕に流れてくる。だから、当時はIRとPRをやっていて、社内の教育制度を作って、内部監査をやり、システム担当者、ウェブを作ったりとかも、インフラ作ったり、ネットワークを管理したりとか、あと外食の人材サポートとかコンサルをやっていた会社だったので、外部コンサルでできる人がいないと僕がやるみたいなことをやっていて、まあチャレンジングなことはあったのですけれど、どんどんプレッシャーだけが増えていって、そこに気持ちがついていかなくなったわけですね。そういうプレッシャーの中、なんかもうタスクがこなせなくなってしまったんです。
ワダ:
結局モチベーションが上がらない中で、器用貧乏でこなせちゃってただけだもんね。
荻野:
そうです。それで1年前上場する前後の時は、経営陣や社長から任されている感じもあって、そこにやりがいを感じてやってたんですけれど、そういうところもだんだん薄れていくという中で、モチベーションを出そうとしても枯渇していくのを感じて。
毎朝、朝礼で経営理念を唱和するとかやるわけですよ。持ち回りとか、毎回アトランダムに誰かが発表するのがあって、それを大きな声で発表しなければならないんですけど、朝からストレスで、ある日その唱和ができなくて、ずーっと流暢に言えない状態、何回も何回も途切れちゃって思い出せない。そういう状態があったんです。なんか、みんなに白い目で見られるみたいな。自分でももう、あっもうヤバい状況だな〜みたいな、そういうのがわかって。
その時期に医者に行ったら、間違いなく“うつ”って診断されるような状態ですね。
ワダ:
体には疾患はでなかったの?
荻野:
体にはなんか出なかったんですよね。
きついな〜、ほんとに行きたくないな〜みたいな。家に帰るたびに、楽になりたいなっていう風に思っていたんですよ。
楽になりたいというのは、家に帰って、その当時、高層マンションに住んでいて30階のマンションに住んでいて、プライベートも仕事も目標がないというか、先が見えない状態があって、家に帰る時、真っ暗な家に帰ると自分が首をつっている姿が部屋の中に見えるんですよ。
ベランダからこう見ると、飛び降りたら楽になるんだろうな〜みたいな、だから死にたいんじゃなくて、楽になりたいという感じなのですね。そんなのを半年くらいずっと味わっていて、まあこれは結構ヤバいな〜みたいな。
僕の友人や友人の兄弟とかで、本当に理由がわからずに自殺しちゃった人がいて、もう家族も理由がわからないという自殺が、何回か身近に経験していて、その気持ちがすごくわかるんですよね。多分、死ぬつもりでそういう行為をしたわけではなくて、ただ単にちょっと楽になりたかったっていう感じで、衝動的に1歩を踏み越えてしまっただけなんじゃないかな。本人は実は死ぬ気はなかったというか、ただ単に楽になりたかったという、そんな感じじゃなかったかなっていう時期だったんです。
でもその時に本当にぶっ倒れずにすんだのが、その頃にちょうど“LOHAS=ロハス”っていう言葉が流行始めて(LOHAS=Lifestyle of Health and Sustainabilityの略)、東洋経済にも“LOHAS”って言葉が特集された時期があって、社外の友人がLOHASクラブネットワークというのを作って、週末農業とか地方活性化みたいなこと、その走りをやりはじめたんです。それで、僕はそれ面白いなと思って、週末その仲間と飲んでいるのが楽しかったので、長野の小諸市の地域活性化のプロジェクトをやっていて、小諸市の職員と長野県、当時は県知事の田中康夫さんのブレインと我々の民間の団体というか、都会の人間とプロジェクトを組んでやるというのがあって、そういうことをやってたんですね。
ワダ:
いい息抜きだね。
荻野:
多分それがなかったら、本当に一線を越えていたかもしれない。そこで仕事とは全く関係ないメンバーに会うとか、農作業、稲作をさせてもらうとか、畑を作業をさせてもらうとか、そこで採ったものをみんなでバーベキューして食べるとか、そういうのを毎週毎週繰り返していたんです。わざわざ毎週片道3時間くらいかけてクルマで行っていたんですね。
自分が部門のリーダーをやりつつも、パフォーマンスを上げようと頑張っていたんだけれども上がらなくなっていっていた。その原因が、まさに内発的動機がないというか、外側と内側が全く乖離しているという、そういう体験を味わった時期ですね。そこがすごく今の仕事につながってくる原点かもしれないですね。
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突き進んだあげくに、心の声に気づかされた

ワダ:
そして、第二ステージだね。
荻野:
そうですね。その週末の活動の中で出会った社長がヨガの会社をやっていて、2003〜4年くらいに日本で再度ヨガブームが起こって、そのきっかけはハリウッドセレブとかがヨガをやっていますというふうに、ヨガが広まっていったわけですが、その会社が仕掛けていたんですね。ニューヨークスタイルヨガ、ニューヨークで流行っていますよという雰囲気でヨガスタジオがどんどん広がって、拡大市場になっていきました。
ある日その活動の時にふと「実はうちの会社も上場目指していて、そこがわかる人を探しているから、君なんかとってもいいね〜」って言われて、役員待遇みたいな形で考えているから、そこのプロジェクトを引っ張って欲しいと言われたわけです。
まだもう少しキャリアを積んでやろうみたいな気力も戻りつつあり、まだ上場ブームみたいなのが残っていたので、もう一回上場させてやろうと。それで、自分が責任者になっていけば、またこれは、キャリアとして箔がつくなと。
ワダ:
内容的には自分に合ってそうだし。
荻野:
そうですね。転職する前に、スタジオでヨガを受けたんです。そのヨガの経験、初めのたった一回の体験が衝撃的で、ヨガのアーサナ(ポーズ)もそうですけど、最後のシャバーアーサナ=瞑想ですよね。その時に、頭の中が空っぽになるという、マインドフルな体験をしたんです。なんだこれはと。
その瞬間に、僕はこの数年間、常に24時間頭の中で何かを考えているんだなっていうのを味わって、真っ白な経験をすることによって、対比として、普段の自分はどれだけ考えているんだっていうことに気がついた。それで、この真っ白な状態をちゃんと定期的に作れるようなメソッドがあれば、自分自身の幸福感ももちろん上がってくるだろうし、さらにビジネスのパフォーマンスも上がるな〜ってまた思っちゃったんですよね。さらに上げられるぞ、またステップアップだと。
ワダ:
行く方向を間違えちゃったのね。
荻野:
そうそう。そんな感じのインスピレーションがすごくあって、ビジネスリーダーにこそヨガを伝えていったら、そういう確信が湧いたんですよね。それがヨガスタジオに転職するきっかけになったかもしれないですね。
ワダ:
その辺りは、今の「マインドフルネス・リーダーシップ・インスティテュート」でやっていることの、丁度ルーツになる感じがするね。
荻野:
まさにそうです。
ワダ:
今となっては、若い頃の軽く、浅いノリも、ベンチャーでのハードな体験も、意味のある必要だった体験だったね。
荻野:
今から振り返ると、本当に経験させられている感じはありますよね。その時はもう勢いだけでしたけどね。
社会的地位とか、年収をどれだけ増やせるかとか、憧れのものを買ってとか、そういうものを目指していましたね。大事なポイントは、世の中がそうだったから、そういう風にしていけば幸せになれると思っていたんですね。
ワダ:
結局、そのヨガの会社は上場はしなかったんだよね。
荻野:
結果的に、僕がいる時は上場しなくて、いけいけどんどんの会社だったんですけど、入って中身を見ると、赤字垂れ流しの店舗とキャッシュがどんどん貯まっていく店舗と両極端で、全体としては少しづつキャッシュアウトしていた時期だったんですね。もうこれは止血をしなければいけないという時期になっていて、管理型のマネジメントをしていたので、社員のモチベーションも上がっていなかったんです。そういう時期だったので、管理部門の役員じゃなくて、スタジオ部門の営業のトップを任されて。
そこで僕は、それまでの経験から社員が幸せになれる会社、一人一人が生き生きと輝いて、内発的に起こるモチベーションでみんなが動いて、まさに今でいう“いい会社”をつくっていきたいと思ったんです。そういう経験もできるからやってやろうと。上場を目指すための計画もあったので、数字も作らなきゃいけない、だからスタジオの数字も増やしつつ、かつ不振店舗は2、3店舗閉じリストラして。かつ、そこで僕がやりたかったビジネスとヨガを繋げるという、法人に対してビジネスパーソンにヨガを伝えるということも新規事業でやり始め、新しい数字も作り、フランチャイズ展開も新規事業で作り、そんなことをやっていきました。
数字は上がりつつあったんですけれど、それに対して新規事業の社員とかも採用していたので、なかなか結果が出るまでに追いついていかなくて、さらなるリストラが必要になっていったんです。店舗を閉じるのもやってきたので、次にやるのは人件費に手をつけなければならない。でも、そのターゲットが、自分自身が作ってきた新規事業のメンバーで、自分が普段からスタジオマネジメントをしていく中で毎日相談している相手だから、辞めさせるなんてできないわけですよ。株主から派遣された社外役員も、ここリストラしなきゃだめだと言われていて、それを覆すような代替案を僕自身が考えなきゃいけないって考えたんですけれど、思いつかないわけですよ。その当時の僕の頭では・・・
前職でも同じパターンを僕は味わっていて、結局数字ありきじゃん。理念として、社員をハッピーにする会社を創りたいって入ったのに、結局また同じことを味わっているなと。でもなんとか一方で、株主とか社長の想いも実現してあげたい〜みたいな、自分もそれで物質的に豊かになりたいなというところも、やっぱりあるわけですよ。そういう葛藤が半年くらいあって、でも、リストラをするしないっていうところで、僕は結局、最終的に代替案も出せないし、社員をカットするための動きを何かしようともできなくて、もう優柔不断な事業部長だったわけです。
結局どうなったかというと、社長とか他の役員から、僕は担当の部署を外され、また管理部門へ戻され、他の事業部長がそこを担当し、結果的にはマネージャークラスの人間が3,4人辞めていって、僕は何にもできないというか、ここでは申し訳ないという気持ちでいっぱいでしたけど、そういった「申し訳ない」っていう言葉すら言えないし、自分の能力のなさでこうなっちゃったのもあるし、会社の中での立場は役員ではあるのですけれど、なんかもう自信を失っちゃっている状態ですね。
リストラが一段落したぐらいに、ある役員会議が開かれ、普段は社内で会議室で行われる会議なのに、その日はちょっと近くの喫茶店でやろうというふうに社長から言われ、そこに行ったら他の役員が集まっていて、なんだこれは、ただならぬ雰囲気だな〜って思っていたら、僕を突き上げるような会議だったんですね。まあ、いろいろな話があったのですけれど、結果的に、ここの数カ月社内がガタガタしてリストラもして、社内の雰囲気が最悪になっていると。荻野さんがスタジオ部門営業のトップになってからそうなったと。
僕からすれば毎週役員会議でこういう方向性で行きましょうと合意をとってやってきているはずなのに、全て僕のせいにされているような印象を受けて、悲しいのと同時に怒りが湧いてきたんですね。こいつら何を言っているんだみたいな。それで最後、社長からは、「君がやってきたことはすべて裏目に出ているんだ」って言われたんですよ。それで一つカチンときたんですけれど。社長の意思を尊重しつつ、一緒にやってきたつもりだったのに、スケープゴート的に扱われ、梯子を外されてしまったという。でも感情をどう表現したらいいのかわからない。机を叩いて怒鳴り散らして出ていきたいっていうのもあるし、でもお客さんがいるところだし、喫茶店なので、でももうこの辺が煮えくりかえっているわけですよ。
でも、その中でずーっと話を聞いていて、他の役員からの一言があったんです。「荻野さん、結局これからこの会社をどうしていきたいと思っているんですか?」って。さっき言った通り、僕はこの会社に入ってヨガとビジネスを繋げていくとか、今までの経験から社員をハッピーにする会社、結果的にお客さんにもいいサービスが提供できて、結果的に収益も上がってくるはずだと、今の活動に繋がってくる “いい会社” っていうものを創りたいと思って入ったんですけれども、結果的に収益はとんとん、社員もリストラしている、とてもそんなこと言えない状態というか、その時はそれさえも記憶からなくなっているそういうビジョンがなくなっていますね。
「この会社をどうしていきたいんですか」って言われた時に、何も答えられなかったんです。ずーっと黙っているわけで、あれ、どうしたいんだっけ?みたいな。もう、自分がなくなっていたんです。
役割とか、責任だけで動いていた半年間一年間だったので、そういう状況で呼ばれて、自分自身を見失っていたんですね。それに対して、「僕はこうなんだ」って言えない自分にもショックで。それでまたガーンときて、その時、心が折れました。
最後に、「上場を目指しているからこうなってしまった。なので、僕は上場を反対します。」っていうことを残して、その場を去ったんです。
喫茶店を出て、とぼとぼと会社に戻る道すがらに、確か9月か10月の秋空で、夕方3時4時くらいですね。ばーっと空を眺めたら、結構綺麗だったんですけれども、あ〜、なんか全て自分が苦労して、築き上げてきたものが、全て崩れ去ったみたいな。砂上の楼閣というか、自分の目指したキャリアとか年収とか、社会的な地位というのか、なんか肩書みたいなものとかなくなっていくんだろうなみたいな。
IPOブームの時もIPOした後もヨガのスタジオの役員になって、肩書だけは一端のものがついても、結局なんか幸せになっていなって。
コーリングじゃないですけども「もう終わりにしようよ」みたいな言葉が内側から湧いてきて。
「今までのこの十何年間位のキャリアを目指す人生、もうやめたらいいじゃん」っていうふうに、もう一人の自分が言い始めたんです。「だって、結局、幸せにならなかったじゃん」って。「それよりも、自分をちゃんと取り戻して、自分らしい生き方、自分の自己を中心とした生き方をまずしよう」と。
「振り返れば、自分の周りも同じよな経験をして苦しんでいるリーダーがいっぱいいるよね。だから、それに気づいたのだから、そういう経営者やリーダーのサポートをするのがいいんじゃないの?」という声が失意のどん底の数秒後に湧いてきたわけです。
まさに、スティーブ・ジョブズの「心の声を聞け」みたいな。あのスタンフォードの有名なスピーチありますよね、あれと同じような声が湧きあがってきて、そうかと。
不思議な感覚ですよね。もう人生どん底だって思っているんだけれども、なんかそういう声を聞いてきて、もうその瞬間この会社を辞めようと。あれは、本当に不思議な体験でした。
ワダ:
やっぱり極まらないと、途中では降りられないんだよね、必ずプロセスって最後まで完遂しないと、次に行けない。
荻野:
そう、やり切らないと、いかせてもらえないのかと。
ワダ:
途中で逃げていたら、また次の何か同じようなのが来るね。
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禅の価値、素晴らしさにアメリカで気づいた

ワダ:
そして、第3ステージ、ライフスタイルプロデュースを起業していくわけだけれども、そっちはこの5年間を振り返ってみると、その後も順調に来れた感じなの?
荻野:
いや、そうじゃないんですよ、実は・・・笑 もう1ステージあった感じがあるんですね。
まずは、自分のコンサル経験とベンチャーの役員をやっていたという経験を持って、エグゼクティブコーチングやコンサルティングを始めました。
起業する人みんなが味わうかもしれないんですが、ビギナーズラックのような、それまでのご縁で先輩からお仕事を頂いたりとか、なんとか食うには困らないようなことになって、そういうのが2年くらい続いたんです。それはとてもありがたかったんですが、やっているなかで自分自身が本当にやりたいものと違った仕事も紹介されたりしてたんですが、金額もいいし、ある一定のプロセスを踏めばできるような仕事なのですが、正直、全然おもしろくないわけですよ(笑)
クライアントも官僚的で、もう一切わくわくしないわけですね。その仕事が辛くて辛くて・・・
起業したのはいいけれど、ほんとにやりたい仕事が出来てないなと。お金はいくらよくても、自分自身が傷つくんだなっていうのを、1年2年かけて味あわさせられたんですよね。
ワダ:
そういう仕事でも適している人もいるからね。
荻野:
そうそう。このプロジェクトのゴールを達成しようということにモチベーションが上がって出来る人はいっぱいいると思うんですね。でも、いい会社を創ろうと悩んでいる経営者をサポートしようとして起業しているから、自分と同じ経験をしているような人やこれから経験するであろう人をサポートしたいという思いがあるから、そういう仕事にも耐えられなくなっていったんです。まさに僕の中では、金に心を、魂を売るのはよそうと思ったわけです。
ワダ:
僕も若い頃そういう段階あったな〜ちょっとリッチな生活や十分な安心できる収入とかが、活動のベースになって、本当に何をしたかったのか見失ってしまったりね。
荻野:
お仕事を頂くことは本当にありがたいことなんですけど、やっぱり自分がワクワクしないとか、モチベーションが上らないとか、まさにファインディング・ジョーでいう、「至福」を感じられない仕事も違うんだなっていうことを、経験をもって、少しずつ感じていったんですね。
ワダ:
なるほど〜 本当は、何を満たしたいのか。自分を満たしていく旅だね〜人生は。
荻野:
自分の内側にあるものに気づく旅なんでしょうね。内側に気づくことに目を伏せるとか、そこに蓋をしても生きていける。そこそこの企業に入ってぼちぼち成果を残して、主任、課長、部長とかなっていれば、ある程度いい生活もできるし、子どもも生まれ、マンションも買ってという生活になるじゃないですか。そうすると自分の内側に目を向けることが怖くなる。気づいちゃったらヤバいみたいな。多分、そういう人はいっぱいいると思うんですよね。
ワダ:
いろんな気づきのメッセージが聞こえる。コーリングやアラートが鳴ってても聞こえないふりをしている人も多いよね。
荻野:
僕も気づかざるを得なくなったわけです。ずっとコーリングはあったんだけど、それに気づかないふりをしていたんです。でも、やっぱり鳴っているなって気づく瞬間があって、それは、僕の場合、最後の突き上げのミーティングの後に、あっ、やっぱ鳴ってるって気づいたと。
ワダ:
ファインディング・ジョーでいうゲイ・ヘイドリクスがひっくり返って頭を打って、実際に生死をさまよったようにね。
荻ちゃんの若い頃、まさに調子に乗ってた頃、そこでも思いっきり鳴ってたよね・・・笑
荻野:
いやそこは、全然わからないですよ。うまくいってるんだもん・・・笑
ワダ:
それはそうだね。。。笑 
ところで、荻ちゃんが禅に興味を持った背景とは、どんなものだったの?
荻野:
二つあって、ひとつはNLPというメソッドを習得するためにNLPが生まれたサンタクルーズで、ロバート・ディルツさんの3週間のコースがあって、それを受けに行ったのがきっかけですね。
NLPも実は東洋哲学とか、禅の思想も入っていて、僕が面白いなと思ったのは、そのプログラムは毎日平日は9時〜6時までみっちり授業があるんです。その後夕食を食べた後に、8時〜9時くらいまで、それぞれの領域で、参加者みんなプロフェッショナルな人間なので、生徒が先生になって、ワークショップを開くっていう、エキストラなワークショップがたくさんあったんです。世界中から生徒が集まっていて、その中にイギリス人の“禅”というワークショップだったんですね。へーって思ってそれを受けたんです。
30分くらい座るエクササイズというか、シッティングの瞑想という感じで体験したんですけど、それって結構日本にあるじゃないですか。
僕自身もヨガスタジオで瞑想のワークショップとかやっていたし、まあこんなもんかっていう感じだったんです。でも、それを受けていたアメリカ人やヨーロッパの人たちが「禅ってすごい!」っていう感じだったんです。その受講者の反応に驚いちゃって、禅てこんなにインパクトがあるんだって。そこが初めのきっかけですね。
帰国して、そこで味わった経験というか、禅とコーチングを繋げたらおもしろそうだなって思って、禅コーチングって作ろうかなって、いろんな人に話していたら、ある経営者が、朝、禅のワークショップやってるお坊さんがいるよって教えてくれて。そこで、今のパートナーの曹洞宗の星覚さんというお坊さんと出会い。
もうひとつは、ジョブズですよね。僕もコンサルもやっているし、ビジネスモデルとかいろいろ気になるわけですよ。よくあんなクリエイティビティとかイノベーションを起こせるなってところは注目をしていて、経営者としてのベンチマークとして持っていて、彼のことを調べていくと、学生時代に禅に傾倒して、永平寺に出家しようと志したこともあったと。
なんでジョブズが禅を学んでいたのか、そこから禅とマネージメントとか、禅と経営とか、禅とリーダーシップっていうキーワードも出てきたんですね。でも、自分で禅の世界を体験しないとわからないと思ったので、星覚さんと禅の旅というのを企画していこうとなっていった。
ワダ:
実際いろいろな経営者が参加していて、禅の反応はどう?
荻野:
潜在的に興味を持っている人はいて、そういう人は実際ワークショップとか一緒にツアーに行って体験してもらうと、いろいろな気づきを得てくれますよね。禅のツアーは満足度がすごく高いんですよ。
それぞれによっていろいろな反応があるんですけど、多いのは経営もそうだし、普段の自分自身の生活をいかにシンプルにするかっていうところと、そこに気づくのと裏返して、いかに普段の生活とかマネジメントが複雑にやっているかということろに気づくような感想が多い。体感・体験として、自分自身の在り方を振り返っていくっていう人がほとんどですね。
禅の旅とか禅のワークショップに来る人も、何かしら禅に興味があって来るわけですよ。そこに来る人は、まだまだビジネスパーソンのほんとに数%だと思っていて、だから禅とマネジメントと言ってもなかなか反応が鈍いと思っているんです。
でも、来る人は何かしら、本人なりの経験をしていて、で、禅から何かヒントを得たいと思って来ている人がほとんどでしょうね。
ワダ:
やはり禅というとね、座禅で瞑想くらいしか思わない人もいるけど、それ以上に禅の永平寺の生活と作法を見ていると、禅的なマインドというか、整えるみたいなね。
いらないものは手放して、本当に必要なものだけで、それを最大限に機能させて充分という世界を作る。
経営においては少ない資源で最大の効率を出すということもあるだろうし、でもそれ以上に佇まいみたいな、会社も社員も全てが佇まうみたいな、そういう世界観があって、そうすると非常にクリアでピュアで心地よくて、そこに来るお客さんも、もちろん心地よくなるだろうけど、経営者や会社が禅の方向に向いた時に、社員はどう感じるだろうね。
例えば掃除とかね、そういったところの中にもちろん出てくるだろうし、お客さんの対応ということに、社長が日々会社に伝えていくことに出てくるのだろうけれど。今まそうではない経営をしている人が、ある時そっちに向いて行った時には、絶対に剥がれて行く(辞めていく、離脱していく)社員さんも出てくるだろうし、戸惑う人も出てくるだろうね。
荻野:
そういう意味で言うと、ひとつのきっかけだと思うんです。
禅の世界に、禅とマネジメントをちょっと考え出す経営者って、ひとつのきっかけで、すぐにはドラスティックには変わっていかなくて、やっぱりリーダー、経営者自身がまず変容していくプロセス、そのひとつのきっかけなのかなと思うんですよね。
ワダ:
経営に禅を取り入れていくに、そのまま取り入れていくというのはなかなか難しいよね。エッセンスとして取り入れていくのは、とても興味深いし、経営の質はきっと高まる。
荻野:
そこが言語化されていないんですよね。禅をこういう風にマネジメントしますとか、日々の作法やこういう毎日のスケジュールがあってとか、エッセンスをこういうマネジメントに活かせますって言っている人って、ほとんどいないので、だからそこがとても難しいところだと思うんですね。
ワダ:
規則じゃないよね。生活態度とか、それは表面的な禅であって、禅のお寺さんも、禅僧を目指してきた若い人は、最初は自由はないし辛いしっていうのはあると思うけど、それが習慣化して、その世界の意味がわかってくると、逆にそこから奥行というか、見えてくる世界がある。
会社での活動の仕方を規則として縛っていくというよりも、禅が目指している在り方みたいな、そういったところが一番エッセンスになっていくと面白いことになっていくんだと。
荻野:
禅から学んだ言葉を、例えば稲盛さんとかジョブズとか、彼らなりの言葉で表現されているというのはあるかもしれませんね。
「ステイハングリー」っていうのも禅からきていると言われているし。まずは禅と経営といった場合に、経営者がそれをどう捉えるか、その上で自分の在り方が定まっていって、そこから経営に生かしていくというのが、今の流れなのかなと思うんですね。ダイレクトに禅とマネジメントは繋がっていかないので、繋げていく翻訳作業が必要だと思っていて、そのあたりがアメリカ西海岸が上手いんだと思うんですね。
ワダ:
そうだね〜。日本にいると禅は、文化に溶け込んでいるところもあるから、自分たちで体験としてわかってる気になってる。
荻野:
そう、特に禅の世界は、見えなくても日本の中にどっぷり入っていますね。茶道もそうだし、千利休も禅の世界から流れていっているし、宮本武蔵も五輪書のなかで禅と武士道的な話も書いているし、合気道とか剣道とか日本の武道にも禅のエッセンスとかが入っていて、当り前のようになっているわけですね。
ワダ:
日本人の倫理観として、災害が起きた後などに略奪とかがほとんどないっていうのは、そういうところもあるかもしれないよね。
荻野:
ですね、結びついている。
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マインドフルネスが、
企業や個人を変えていく大きなツールになっていく

ワダ:
今回、マインドフルネス・リーダーシップ・インスティテュートを立ち上げて、これはマインドフルネスを活用した、Googleで開発されたリーダーシップ研修 を日本で展開していく会社というこだけど、この研修は禅の考え方がベースに?
荻野:
禅とかビッパサナー瞑想とかが背景にあると言われていますね。
グーグルで開発されたものについては、宗教的な色合いは一切排除されて、科学的に瞑想にアプローチしていると。心理学とか神経学とか脳科学、医学的な話とかで展開している。
瞑想やると、こういう風に脳が反応していき幸福感が増していくとか、瞑想するとこういうふうに情動が抑えられる脳の反応がありますよとかいうような、科学的なアプローチがされているんですね。
ワダ:
マインドフルネスという言葉は、基本的にはマインドがフルな状態っていう意味では、心が満たされた状態のように考えたらいいのかな?
荻野:
もともとは、ジョン・カバットジンという人が、70年代80年代に医療の領域でマインドフルということを応用し始めたんですね。
ジョン・カバットジンが定義しているのが『特別な形で注意を向けている状態』っていう風に言っているんですね。僕が解釈しているのは、平たく言うと“いまここ”というような意識の状態ですよね。瞑想で目指すような状態でもあるのですけれども。いまここに意識を向けていくというものが、マインドフルな状態だという風に定義されていますね。
ワダ:
Be here now「いまここ」がすごく大事だって、未来を憂うことなく、過去の色々な出来事にとらわれない。
過去の体験にさいなまれるということは意識的には過去にいて、未来に不安を覚えるということは、意識は未来にいるから「いまここ」にいないという。
「いまここ」にいられれば、そういう迷いや不安がないってことだけれど、多くの人にとって「いまここ」っていうのは、なかなか解りにくいかもしれないね。
荻野:
そうなんです。まさに、特別な形で注意を向けるとは、やっぱり我々って、昔の自分じゃないですけれど、僕もずっと何かの思考にとらわれていると。その思考が何かというと、過去こういうことがあって、ああいう結果になっちゃって残念だとか、自分が家族に対してひどいこと言って、言わなきゃよかったとか、未来に対して言うと、明日こういうミーティングがあるから資料まとめなきゃとか、ずっとそういうことを考えている。そういう状態ではなく、そういったものを手離していく。
あと、瞑想のワークを指導していて、感想として面白いのが、これでいいのかどうか、上手くできているか心配でしたとか、なんか上手く瞑想できないなってずっと思っていましたとか、要はそこで評価や判断が入っているんですね。人ってやっぱりこういろんな評価、判断をしながらずっと考えていることをしていて、そこからくる思考とか、感情とかにもとらわれていると。そういった思考、判断、評価とか感情っていうのも手離している状態を「いまここ」って端的に言ってるんでしょうね。
ワダ:
さっきのミーティングの話だと、資料を準備しなくてはとか、やらなければいけないことはやらなければいけないのだけれども、そこにそれ以上の感情的な不安は抱くことなく、ただ淡々とやるべきことをやればいいと。
その状態になるように、瞑想はひとつの大きな効果があるし、そのような状態をいかにして、日頃から作っていけるかってことがマインドフルネス・リーダーシップセミナーであると。
リーダーシップという言葉が付いているけれども、これは管理職のリーダーっていう意味ではなく?自分自身をってこと?
荻野:
もちろん企業とか組織のリーダーシップという意味は含まれているのだけれども、まずは、リーダーになってパフォーマンスを発揮していくためには、組織を導いていくために、まずは自分自身が、自分のリーダーでなければならないと。セルフリーダーシップっていうことがひとつ大きくありますよね。
ワダ:
このマインドフルネスを伝えているSIYLI=Search Inside Yourself Leadership Institute(シリィ)は、NHKの幸福学白熱教室にも紹介されていたけど、カリフォルニア、シリコンバレーを中心とした企業にこの研修を提供しているのかな?
荻野:
そうですね、日本人が知っている企業ですと、SAPというエンタープライズ向けの大規模なシステムの会社、フェイスブックやインテルでもやってるみたいですね。
ワダ:
講座はだいたい何人くらいでやっているの?
荻野:
ひとつの講座で50人がマックスだといわれています。基礎講座があって、17時間のプログラムがあります。それを毎週平日でいえば2〜3時間、7週間〜8週間のプログラムでやっていくというのがひとつですね。
ワダ:
一通りそのプログラムが終わると、みんなマインドフルネスの考え方というか、世界観がわかるから、あとは業務の中で、自分で必要に応じて瞑想したりとかっていうことをやっていく?
荻野:
自分自身でやっていくのと、もちろん次のフォローアップのトレーニングもあるということですね。
ワダ:
マインドフルネス=瞑想ではないけれど、プラクティスのひとつとしての瞑想があって、それはやはり中心的で、重要なものだと思うんだけど、瞑想をするようになるというのは、瞑想をするようになったからより良くなったのか、自分のエネルギーがいろいろな変遷を経て変化したから瞑想に向かったのか、ここは難しいところだけど、いずれにしても、瞑想が精神的にも、肉体的にも健康にとって素晴らしい結果をもたらすことは間違いなくて、そこから、自分の生き方や人間関係、社会の中との関わり方などがより良い方向へと向かっていくね。
どんなきっかけでも、これが拡がって行くことは、すごい社会変革になるような気がしているんだよね。
荻野:
なりますね。要は、リーダーシップスキルのひとつとして、そのマインドフルネスというスキルがありますよということで、彼らが言っているのは、このアテンションというものは、トレーニングができるものだと。練習すれば誰でも高められるスキルなのですっていう話をしているわけです。
ワダ:
それは、瞑想なり、マインドフルネスなりの構造を、心の取り扱い方みたいなかたちで、とても整理されて、科学的にそういうプログラムが作られたというのは、非常に意義のあることだよね。
荻野:
それが今、グーグルだけじゃなくて、スタンフォードだとかハーバードとかでも、マインドフルを扱った講座が人気があるということですね。
スタンフォードの人生を変える授業とか、ハーバードの人生を変える授業という本が、今、ベストセラーになっているけれども、あれを読むと3分の1くらいマインドフル瞑想のことが出ています。
ワダ:
一般の社員の人にとって朗報なのは、納得のいかない話っていうのは、会社なり上司なりの理不尽な、感情的な怒りなり恐れなり、それに対してのさらなる理不尽な指示とか、あとは、何でこれやってくれなかったんだみたいな、個人的なものを織り交ぜて、指示したりするケースって本当に多いと思うんだけれど、逆にいえばリーダーも部下が感情に左右されながら、実際には職場で働いたりしているわけで、経営者も朝令暮改でよくあると思うのだけれど、内省するというところに向いて行ってくれたら、非常に変わってくるよね。そこが朗報だと思うけどね。
荻野:
僕がプロフィールに書いているのが、結局コンサル時代とか、ベンチャーのマネジメントをやっている時に気づいたのが、会社の問題というのは、経営者の在り方がその原因となっているというところで、今僕がコンサルとしてやっていくきっかけとなったのですけれど。そこの経営者の在り方に気づいていく、ひとつのトレーニングとして、このメソッドが大変有効であるといったことですよね。
ワダ:
これからマインドフルネスが、どんどん広がっていってもらいたいなって思うし、今後、導入した企業の結果が見えてくるのが非常に楽しみだね。目標としては、どんな感じで展開を考えているの?
荻野:
基本的には、B to Beを目的としていて、今年は2つか3つ、大手企業に対しての事例をちゃんと作っていきたいなと思っていますね。あと、今年は10月に、開発メンバーであるSIYLIのCEOのマーク・レサーさんを日本にお呼びして、グーグルでやっているトレーニングを、実際にやるので、大きなきっかけになるのかなと。
ワダ:
グーグルの日本法人はどうなの?
荻野:
グーグルの日本法人は実は今年からなんです。
ワダ:
それはやるの?彼らの?日本法人は今年からって設立は?プログラムを導入する?
荻野:
SIYLIのメンバーの方が来て、まずはグーグルジャパンの有志だけでワークショップをやり始めたと。今年にかけて、徐々に展開しようという流れのようですね。
ワダ:
今後のマインドフルネス、要注目だね!
また、読んでいる人も、機会があれば、ぜひ、セミナーに参加してもらったらと思います。
リーダーシップってついているから、管理職とか経営者限定っぽいんだけどそうではなくて、誰でも参加できるものなので、自分自身を導く、セルフリーダーシップというところだね。
荻野:
そうですね、機会があれば、いろんな人に参加いただいて、マインドフルネスを味わっていただけたらと思います。
ワダ:
ところで、今後の荻ちゃんのビジョンについて聞かせてください。
荻野:
ビジョンとしては、自分の経験を生かして、いい会社、社員とリーダーが、マインドフルでハッピーな会社を作っていく。具体的には、自分たちで事業会社を作っていきたいと思っています。そこでリーダーが自分の内側とちゃんと繋がって、それを体現していくという経営者がどんどん増えていけば、いい会社というものが必ず増えていくと思うので、そこをある程度影響力を持った形でやっていきたいと思います。いかに影響力を持つかというところが、今後の僕の課題かなと思っています。
ワダ:
荻ちゃんは、たくさんの人たちと繋がっているから、これからみんなの力も含めて、いい拡がり方をしていくのかなと、すごく感じているので、僕も積極的に応援していきたいと思っています。今後もまたいろいろと一緒にやっていきましょう。
荻野:
よろしくお願いします。
ワダ:
今日はありがとうございました。
* 制作協力 : 藤田明子
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【取材後記】

荻ちゃんは不思議なエネルギーを持っている。世の中にはいろんなエネルギーを持つ人がいて、わかりやすいのは、猪突猛進型のイケイケ系とか夢を追いかけていつもポジティブに前に進んでいる様な人。また、逆に、自信が無く、夢を描けない人や自分には関係ないと夢をあきらめている人。。。荻ちゃんは、そういう意味では、ニュートラルに位置する人なのかなと思える。仏陀の教えで言えば、中道を歩もうとする人。

ここは僕が一番共感するところでもある。自分を肯定しながらも、過度に自己主張すること無く、今ある状況を受け入れながら、最善の策を考え、状況に適応しながら、より良い世界を創造していく。創業者型の何も無いところからバリバリと豪快に自分の世界を創造していくのではなく、とても智慧の働く参謀、助言者という存在。そんなエネルギーが、荻ちゃんの今の仕事や人生を表現し、その才能を生きる故に、荻ちゃんの人生の成功や幸せがあるように思える。

人と人をつないで、構築していくと言うよりも、そこに押し込められて本来の機能を失いかけている組織に、荻ちゃんという潤滑剤が入ることで、それぞれが滑り出すように、本来の機能を復活し、組織全体が息を吹き返す。どんなに精巧なエンジンでも、潤滑油が無ければ全く動くことがないように、無くてはならないそういうエネルギーをいつも感じている。

そうした荻ちゃんの才能は、天性の感性とその感性が輝き出すために必要だった、失敗や苦難の数々。。。実は、誰しもそれは同じで、適材適所、それぞれに才能があり、それを表現する元となるエネルギーがある。その自分本来のエネルギーに気づけた人は幸いだ。しかし、その人生を未だ生きることができない人もまた多いもの。しかし、すべての人に才能はあって、その才能が輝き出すためには、まず、原石を削り出し、磨いていかなくてはいけない。

そのためには、輝きはおろか、それが素晴らしいクリスタルであることすらわからないようにこびりついた観念という不要な部分を砕き、削り落とすために必要な、時に荒療治も人生では必要とされることも多い。それは当然、痛みを伴うことも多いのだ。

しかし、その痛みを乗り越えるのは、自己への信頼と誰しも、その人にとってベストな才能が必ず眠っているという真実への信頼。

一見、何のへんてつも無いゴロ石のように見えても、その内側には必ず美しいクリスタルが眠っている。みんなそのクリスタルを見いだし、輝かせることができる。荻ちゃんの体験は、まさに、そうした自分のクリスタルに出会うための、まさに、ヒーローズジャーニーであり、また、さらなる輝きへの旅の途中とも言える。

これからも、共に、自らの輝きを強めていくために、荻ちゃんの旅もまた応援していきたいと思っている。

荻野淳也 プロフィール

一般社団法人マインドフル・
リーダーシップ・
インスティテュート代表理事

株式会社ライフスタイル
プロデュース代表

大学卒業後、積水ハウスの戸建住宅の営業職、本社管理部門職を経て、アーサーアンダーセン(現べリングポイント)にて、上場企業を中心に、経営理念策定、業績評価制度構築、人事評価制度構築、事業投資性評価制度構築、連結決算早期化、等のコンサルティングプロジェクトに従事。

その後、(株)リンク・ワンにて、株式上場準備を担当、2004年7月にIPOを実現。IPO後、経営企画、IR、PR、コンサルティングプロジェクト、社内システム構築、社内人材開発プログラム開発、等に従事。

(株)ロハスインターナショナルにて、大手ヨガスタジオ、スタジオヨギーの管理部門責任者、スタジオ部門責任者。管理部門全般、そして、スタジオマネジメント、スタジオフランチャイズ展開、新規事業開発等に携わる。

2008年1月より独立し、2008年8月8日に(株)ライフスタイルプロデュースを設立

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