昔からテレビでは、未開のエリアに取材班が入り、見たことも、聞いたこともないような場所やそこに暮らす人々、民族などを紹介する番組があった。
僕の子供の頃は、久米明のナレーションの「すばらしい世界旅行」や「知られざる世界」「驚異の世界」なんていう番組があって、子供心に、驚嘆と共に、世界の奥深さを知ったものだ。
■ すばらしい世界旅行
■ 知られざる世界
■ 驚異の世界
当時、飛行機もすでにジェット機による国際便が飛んでいたわけだけど、ヨーロッパに行くにも、アラスカのアンカレッジを経由していた時代で、そんな中で、アマゾンやアフリカ、中近東など、海外というだけでも、とても遠いところで、庶民には一生縁の無いような世界だった。
現代のようにインターネットでつながっている世界ではないし、グローバリズムもないから、地球上の地域地域がそれぞれに独特の文化を持って暮らしていた。
1970年に開かれた、日本で初めての国際万国博覧会、大阪万博の映像なんてみても、各国の特色が色濃く出ていて面白い。当時、万博のパビリオンよりも世界中から集まった外国人を新鮮な目で見ていた人も多い。
最近では、タレントが毎週のごとく世界中に足を運び、3日〜5日くらいの弾丸取材でアフリカに行ったり、ブラジルに行ったりと、体力勝負で取材してこれるほど、世界は小さくなった。いろんな番組で、世界中の秘境と言われるようなところにも、軽々と取材班が入り、バラエティとして紹介されるほどだ。
僕自身、秘境とまでは言えないけれど、結構へんぴなところも旅してきたけれど、モンゴルの奥地で遊牧民の家族にお世話になったとき、彼らは大草原で、普通に携帯電話を持って、馬に乗りながら話しているのを見て、ここに来た意味があったのかと戸惑ったほどだ。
ゲル(テントの家)ではソーラーパネルで発電し、大きなパラボラアンテナで衛星放送を見て、なんと冷蔵庫まで持ってる。ただし、夜は電気が切れるのだが・・・
まあ、アフリカのマサイ族だって、携帯電話を持ている時代だから、もう未開の地なんてどこにもないのだろう。あるとすれば、深海くらいか。。。
今回のインタビューの雄己が紹介してくれているタイガは、これまでの日本からすれば、ある意味で未開の地に近かったのではないだろうか。しかし、驚いたことに、東京からの直線距離だと、北海道と変わらない距離にある大自然だ。それでも、実際のアクセスには一苦労するのだけれど・・・
この極東ロシアの地、タイガ地方は、ほとんど手つかずの森で、そこにいるのは、野生動物と先住民たちだけだ。もちろん、インタビューに出て来るように、先住民族の人々は、ソビエト時代に、ソ連化させられて、今もロシア的、近代的な暮らしをしている。しかし、村から一歩外に出ると、体長3メートルのアムールトラが、足音も立てずに存在を森に溶け込ませて、じっと侵入者を見ているような場所。そこは、人間のテリトリーではなく、大自然の掟が支配する神々の場所でもある。
人間は、神々の世界を忘れかけている。神々の世界では、人間のつくったルールなんて通用しない。そこには、大自然の摂理、神々の掟しかない世界。人間が作った世界は、神々の土台の上に作られていることを忘れてはいけない。神々が、くしゃみをすれば、その上に作られた世界なんて、一瞬にして吹き飛ばされてしまうのだ。
雄己が伝えてくれる大自然。そこに息づく人々の世界。本来人間に備わっている感性。生きる力。世界中に秘境なんてなくなってしまったこの時代に、神の掟が支配する本当の大自然は、村を一歩出たところに存在する。いや、神の掟は僕たちの魂の中にあり、本当の秘境は心の中にあるのだろう。
こうして僕たちが失いかけている世界を知ることで、僕たちの心の中にある大切なものをもう一度、思い出そうとしているのかも知れない。