クルマも楽器、奏でる音色や味わいと同じ
- ワダ:
-
こんにちは!今日は、これまでのクエストカフェ・インタビューとは少し角度を変えて、モーター・ジャーナリストのピーター・ライオンさんに登場願いました。
今日は、よろしくお願いします!
- ピーター:
- はい。よろしくお願いします!
- ワダ:
- ピーターさんは、オーストラリアの出身なんですが、日本人の奥さんとご結婚されて、僕のお友達でもありますが、もう30年くらい日本で暮らされていますね。
- ピーター:
- はい、そうですね。海外の取材や仕事も多いので、いろいろと動いていますね。
- ワダ:
- ピーターさんとは、昨年、外国人記者クラブで、福島の原発問題が収束していないことについて、その現実を専門家や福島に詳しい方を招いて、外国人ジャーナリスト向けに現実を伝える報告会をされていて、それが出会うきっかけでした。
- ピーターさんって何者?と思っていたら、モーター・ジャーナリストということで、さらに興味を持ってしまって、日本に暮らし、日本をよく知る外国人と言うこともあり、ピーターさんの活動や考え方についてお話を聞いてみたいなと思って、今回お願いしました。
- さて、まず最初に、モーター・ジャーナリストっていうのは、どんなお仕事をされているのか分からない方も多いかと思うので、その辺りから教えていただけますか?
- ピーター:
- 簡単にいうと、だいたい二つの仕事です。
- ひとつは新車ニュースとか、クルマの技術がメーカーから発表されると、それをかい摘んで、経済情報、自動車情報も交えながら、原稿を書いて媒体に乗せる。
- もう一つは、新車が出た時にそのクルマに試乗して、試乗記を書く。それで、いつもカメラマンとか、ビデオの人を連れて行って、その写真を撮ってもらうんですが、最近は自分でもビデオを撮ります。写真とストーリー、試乗記とかを書きますね。
- やはり、最近読者が一番知りたいのは、近い将来どういうクルマが出てくるのかということで、海外からの媒体が一番書いて欲しいストーリーは、スクープ記事ですね。
- ワダ:
- なるほど。
- ピーター:
- 最近は多くの読者がインターネット時代なので、みんな長い記事を読みたくない、写真やビデオを見たいんですね。
- だから、ビデオも載せなればいけない。ビデオを作るのはけっこういですね。だから、自分で撮影して編集してつくったりもしています。アップルストアの編集コース行って、自分で勉強しました・・・笑
- ワダ:
- それは大変ですね!僕は仕事がら現場が分かるからその大変さ、よくわかります。。。
- ピーター:
- 海外の媒体にも載せているし、日本のクルマ選びのポータルサイト、オートックワンという媒体にも載せています。
- 国内のレースやルマンとか、ニュルブルクリンクの24時間耐久レースのレポート。そして自分が出ている24時間レース。
- ワダ:
- 24時間耐久レース走っているんですか?
- ピーター:
- はい、レーサーもやっています。
筑波サーキットのレース。マツダのロードスターのワンメイクレース。そういうレポートも作っています。
- ワダ:
- すごい!知らなかった・・・
- ピーター:
- 後は、ワールド・カー・アワードという組織の会長をしています。また、日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員もしています。
《今年3月に、ニューヨーク・オートショー会場にて、ワールド・カー・アワードの会長として、ウィナーたちにトロフィを手渡した。今年の快挙はVWゴルフでした》
- ワダ:
- すごく活躍されてますよね。。。!
- クルマのレポートや情報の読者というのは、主にスポーツカー系のファンが多いですか?
- ピーター:
- スポーツカーも多いんだけど、普通のセダンでもハイブリッドでも、電気自動車、日産リーフなんかでもそうですよ。
- ワダ:
- クルマそのものが好きな人たちがターゲットになるんですね。
- ピーター:
- メインはそうなんですけど、それ程クルマに興味のない人たちに、どういうふうにアピールしようかということを考えていますね。
- ただの移動手段ではなく、ライフスタイルの中のクルマの役割を考えていかなきゃいけないと思っています。
- 僕たちが試乗車に乗るときは、大体一日しか乗れないんです。僕は3日から1週間くらいは乗りたいんですけど、そうするとクルマの良さとか、足りない部分がみえてくるんです。
- スペースが足りない、ヘッドルームが足りないとか、リアの乗り降りが良くないとか、妻も乗せたりするんだけど、そうすると、この質感がいいねとか、デザインがいいね、色の使い方もいいねとか、座り心地がいいねと、僕が見えていないところが見えてくるんですね、そういう違った見方がたまに必要だと思うんです。
- ワダ:
- 僕なんかは、ポルシェに乗っても、何に乗っても、結局運転席から見える景色は一緒だと思っちゃうんですよね。
- ピーター:
- でもね、人間に伝わってくるスリル度とか快感が違いますよ。
- 妻はミュージシャンだから、いつも楽器に例えているんです。
- 彼女はフルートをやっているんですけど、ピアノもそうですけど、いろんな価格のレベルがある訳ですね。
- 例えば10万円のフルートと100万円のフルートの音は全然違うでしょ?
- ワダ:
- そうですね。
《菅生サーキットでの、レポートのための日産GT−Rの試乗》
- ピーター:
- 音もぜんぜん違うし、もっと深いとか、明るいとか、伸びがいいとか、艶があるとか。クルマもそうなんです。
- 日本独特のことですけれど、一般の人はあまり差がわからないと思うんです。乗り心地とかサスペンションのチューニングとか。
- 道路の路面の状況を普通に吸収してくれて、それで乗り心地が良ければそれでいいんですけど、ヨーロッパ人は、そういう乗り心地に対して、一般人でももうちょっとアンテナが立っている。
- 一般の人がうるさい。なぜなら毎日乗っているわけですね。石畳とか道路状況も違うし。
- もう一つ重要なのは、ヨーロッパの方は平均速度が違うんです。だからサスペンションが日本のクルマと若干違うんです。そういうハイスピードに適したサスペンション・チューニングにしている。
- ワダ:
- アメリカもそうだけど、ヨーロッパも、レンタカーでいつもの感覚で走っていたら、どんどん追い抜かれて行く。もう一段踏み込まないといけないですもんね。10キロくらい違うだけなのに、緊張感ありますよね。
日本とヨーロッパでは嗜好がまったく違う
- ピーター:
- 何故ヨーロッパではハイブリッドができなかったのかという質問に対して、あんまり日本の自動車メーカーは考えていないんじゃないかなと思ってしまうんです・・・
- ハイブリッドが出たのは、ちょうど16年前、97年にハイブリッドカー、プリウスが出て、毎年のようにいろんなメーカーからも出ている。
- ハイブリッドはある程度のスピードまでガソリン車より燃費がいいんだけれど、110キロ、120キロ超えると思いっきり燃費が悪くなるんですね。普通のクルマと一緒になっちゃう。メリットが消えちゃう。
- ワダ:
- なるほど〜!
- ピーター:
- もう一つはルックスが保守的というか、昆虫的のような・・・空力抵抗がいいってことですが、ヨーロッパではそれほどカッコイイと思われていないんです。
- ワダ:
- 日本だと、結構ウケてますよね。
- ピーター:
- そうですね。
でもヨーロッパで受け入れられなかったもう一つの理由は、CVT(無断自動変速機)がついているんですね。
- ワダ:
- うん。なんかだんだん、すごくマニアックな話になって来ました。。。笑
- ピーター:
- はい!笑 ヨーロッパ人は普通のミッション車・・・マニュアルが多い。デイーゼル・ターボ、六速ミッションが一番多いパターンで、女性も大好きなんですよ。
これからはデイーゼルの時代になってくるんじゃないかなと思うね。カルロス・ゴーンが『2020年までに日産のラインナップの10%が電気自動車になる』と言い切っていますけれども、今は日産リーフはターゲットの半分くらいしか売れていないですよね。一つは、航続距離が短いということで、みんなまだビビッているんですよね。走りはいいんですよ。これははっきり言えます。普通のクルマと変わらない。
- ワダ:
- リーフとか電気自動車とかっていうのは、携帯とかコンピューターとかもそうですけど、電子機器系のイメージがある。
- ピーター:
- そう、すごくデジタルな感じ。
- ワダ:
- ムーアの法則っていうのがありますよね。同じ値段で、ぐっと性能のいいコンピューターが出てくる。
- 新技術であるとか、リチウムとかも、3年後、5年後の技術っていうのはすごく進歩すると思うんですよね。だから、どのタイミングで買うのがベストなのか・・・
- 太陽光発電もそうで、太陽光発電って、今、爆発的に増えているけれども、たぶん10年後には10分の1の価格でできるようになるんじゃないかなとかね。
- ピーター:
- うん、もうちょっと先だと思うんですよね。特に電気自動車は。
- でも売れなければ、開発もそんなに進まないんじゃないかなと思ってね。
- 今は、ディーゼルハイブリッドが、ヨーロッパで一番話題になっているんですね。ディーゼルハイブリッドは、技術的にはガソリンハイブリッドより難しいんですよ。
- でもディーゼルは、ハイブリッドがついていなくても、ディーゼルターボだけでもミッション関係がすごくクリーンになってきたし、何よりも走りがいいんですね。都心の中で走っても、高速道路走ってもすごく楽しい。しかも燃費がメチャクチャいい。ハイブリッドとほとんど変わらなくなってきた。
- ワダ:
- 水素を使う燃料電池はこれからどうですか?
- ピーター:
- コストが問題ですね。一般人がどういうふうに買えるのか、それともう一つ重要なのは、どういうふうに水素ステーションをセットアップするかですよね。
- 5年くらい前にホンダの水素自動車に乗った時、お台場の水素ステーション行って燃料補給やったんだけど、やはり5分以上かかったんですね。10分近くかかったのかな。今はずいぶん早くなったけどね。まだ先の話だね。2015年には出そうとメーカーは言っているんですけどね。でも高いと思いますよ。
- ハイブリッドがウケけた国は、日本とアメリカしかないですね。
大都会の中でコツコツ走る分にはすごくいいんですけどね。でもそれ以外のところではウケけないんですね。
- ワダ:
- やはりハイブリッドの方にコストがかかるから、その他の所はお金はかけられないので、乗り心地とかはね・・・(笑)
- ピーター:
- そうだと思いますよ(笑)
- あとデザインもそうなのかな。もうちょっとカッコイイ形はできなかったのかな・・・
- ワダ:
- 例えばシトロエンって昔から奇抜な恰好ですけど、今でも奇抜なデザインしてますね?
- あれフランス人はカッコイイって思っているんですよね?
- ピーター:
- カッコイイと思ってます!当然 (爆笑)
- すごくユニークなデザインしてるんですよね。フランス人の考えはやはりヨーロッパ中でも偏っているんですよ。ルノーもプジョーもそうなんだけど、一番偏ってるのはシトロエンですよね、昔から。
- ワダ:
- 偏っていますよね。。。愛すべき偏り。。。!笑
- ピーター:
- 30年40年前のシトロエンも異常なデザインですよね・・・笑
- そうそう。サスペンションも、上がったり下がったりするような。
- ワダ:
- ル・コルビュジエが原型をデザインしたドゥシボ(2CV)もユニークですよね。
- ピーター:
- でもねぇ、愛せるんですよね。最近、そんな愛せるクルマってなかなか出ないですね。
- いまは、次の世代に任せようという動きがあるんですよ。スバルのなかでも。だから、BRZはある程度カッコイイクルマになったし、この間ニューヨークで出た、次期WRXもコンセプトも随分カッコイイんですよ。全世界のジャーナリストから高く評価されていますよ。若いデザイナーに任せているから。
- 最近多くのメーカーは車のデザインとか走り、乗り心地よりも、デバイスに対して力を入れているんですね。
- ワダ:
- デバイス?
- ピーター:
- 衝突防止システムとか。アダプティブ・クルーズコントロールで、前のクルマにロックオンして、前のクルマについていくんです。アクセル踏んだりブレーキ踏んだりをクルマがしてくれるんですね。いいんだけれど、どこまでドライバーがしてくれて、どこまでクルマっていう境目がね・・・
- ワダ:
- どこまで信頼していいかわからなくなりますよね。ナビなんかもそうですよね。信じてたらとんでもない道を走っていたりとか・・・笑
- ピーター:
- いつもそう・・・笑
だからちゃんとした地図を持ちましょうってことを言ってるんだけど・・・笑
- ワダ:
- グーグルの運転しなくていいシステムは、どうですか?いま、アメリカではコロラドとカリフォルニアで実証実験やってますよね。。。あのシステムが正確に作動するのであれば、人間が運転するより安全なんじゃないかと思うんですけど・・・
- ピーター:
- “ある道では”ですよね。普通の道を走っているとそうなんですけど、例えば、右に曲がらなければいけないとなったら、人間に任せないとエライことになるんですよね。
- 向こうからくる車、自転車が走るわ、人が走るわ、子供が走るわ、犬が走るわと。だから人間の目に変わるものはないと思うんですね。多分、僕たちが生きている間には、そんな車が出ないと思っていますけど、僕は運転を人に任せたいんですよ。
- 運転の楽しさを、メーカーが技術で引っ張っているんですね。
- それは、少しずつ車がつまらないものに変わっていっているってことです。
- 最近の多くのクルマは、買ってもなかなか愛せるところが出てこないんですよね。日本がそういうクルマを造りすぎている。
- デザインが浅いというか、いま日本の最も危険なのはデザイン開発です。日本のデザイナーたちは技術の人たちに押されているんですね。自由にデザインできない。
- ワダ:
- はい。
- ピーター:
- 例えば、信頼性があってコストパフォーマンスの高い、いいクルマを造っても、最近では韓国のクルマに負けていますね。
- どういう意味で負けているかというと、技術的に、コスト的に日本車と並んだんだけれど、デザイン的には日本車を超えています。
- ワダ:
- へえ〜そうなんですか!?
- ピーター:
- それはどうしてかというと、世界でどういうデザインだと、より多くの人たちが気に入ってくれるかということをしっかり調べているんですね。
- ヒュンダイは、5年前にもとアウディのトップデザイナーだったペーター・シュライヤーをデザインセンターのトップに採用して、彼のデザインが世の中に出てきているんですね。
- 日本にいたら、もちろん韓国車がほとんど入っていないので、なかなか走っていないし、乗れないし、見られないでしょう?
- だから日本人の視野に入っていない。だから韓国車の良さが全然わかっていないんですね。
- 海外に行くと、どこにでも韓国車があって、販売の伸び率が日本車よりどんどん増えているんですね。
- ワダ:
- FTAの関係で、日本より20倍くらい競争力があるってききましたけど・・・
- ピーター:
- それだけじゃなくて、日本が恐れるべきなのは、全体的な韓国のパワーですね。薄型テレビにしても、スマホにしても、サムスンとかLGにしても、日本をもう潰しているところがあるんですね。デザインがいいから。
- ワダ:
- うん。
- ピーター:
- 性能的には日本と並んでいるんです。テレビにしても、スマホにしても、日本と並んでるんだけど、デザインではもう次の時代にいっている。すごくカッコイイし、コスト的には日本の物より少し安いんですね。
- ワダ:
- うんうん。
- ピーター:
- 薄型テレビでもヨーロッパの友達は、東芝とソニーのテレビ、LGとサムスンのテレビがあった時に、みんなLGを買っちゃうんですね。デザインがいいから。
- ワダ:
- うん。
- ピーター:
- 気を付けないと日本は置いていかれちゃう。
- ワダ:
- 僕は、やっぱり日本のメーカーの物を買わなきゃいけないみたいな気持ちがあって、高くても日本のものを買っちゃうんですけど。Buyingキャンペーンっていうのかな。日本の物を買おう、Made in Japanの物を選ぶって。なんかある意味悲しいけどね・・・笑
- ピーター:
- 日本の工芸品とか、焼物とか、絵とか、家屋とか・・・日本は素晴らしい歴史があるんだけど、そういうデザインの良さとか細かさが、あまり日本のクルマの世界に入ってきていないですね。ギャップがある。そういう日本の良さをクルマの世界に入れてほしいですよね。
- ワダ:
- 愛情が持てる、愛着が湧くものっていうことでね・・・
日本の素晴らしさはホスピタリティ
- ワダ:
- 今シリコンバレーとかで、電気自動車とかの新しい自動車メーカーがいくつも生まれていて、モーターで、エンジンを使わなくていいから、そこの難しい技術が必要ないでしょう?
- だから、ロケット工学とか、元NASAの技術者を入れて開発したりしてますよね。あの辺はどうなってくるのか面白いなって。
- ピーター:
- 電気自動車ももっと普及するとか、ハイブリッドももっと普及するとかっていうんだけど、ジュネーブ行っても、ニューヨークに行っても、フランスに行っても、いろんな所のモーターショーでそういう話は出るけど、当分僕たちが生きている間、80%〜90%のクルマは今の車と変わらないと思います。ガソリンかディーゼルか、ディーゼルハイブリッド。
- あるいは、電気デバイスがつくディーゼルハイブリッドとか、ガソリンハイブリットとか、そういう構造になっていくと思うんですね。一つには技術的に難しいし、高いし、もう一つは一般人が乗りたがらない。走りの良さ。プリウスみたいなハイブリッドが、ヨーロッパで今ひとつ受けなかった理由は、走りが面白くない。
- ワダ:
- そうなんですか?日本では、そういうこと一般の人はあんまり考えていないような気もしますが・・・
- ピーター:
- ヨーロッパ人は考えていますね。
ハッチバックでも、ディーゼルターボでも、六速ミッションの人たちが50%以上でしょう。
- 若い20代の女性でも、そういうクルマに乗りたいんですよ。バリバリ走りたんですね。クルマを運転することが好きになんですヨーロッパ人は。日本人はある意味、忘れかけていますね。
- ワダ:
- ドイツ人はどうですか?
- ピーター:
- ドイツ人も クルマ乗るの大好きですよ。
- ワダ:
- じゃあ比率的にも50%以上がミッション?
- ピーター:
- そう。
- ワダ:
- レンタカーも、ミッションが多いですもんね。
- ピーター:
- それが基本なんですよね。乗って楽しい物。ただの移動手段じゃない。だから日本の自動車のラインナップ見ていると97%がオートマかCVTになっちゃったんですね。今、六速ミッションっていうと何かあげられますか?
- ワダ:
- 思いつかないですね。
- ピーター:
- あげられないでしょう?ロードスターかBRZ、86くらいしかないでしょう?
- ワダ:
- うん。
- ピーター:
- 日本の状況はハイブリッドになって、ミニバンになって、軽自動車・・・というふうに成り立っているんですね。
- それ以外のクルマはワゴンもほとんど消えたでしょう?
- シビックもホンダのラインナップから消えたでしょう?シビックが消えていくなんて、考えられないでしょう。なぜってフィットが売れちゃったから。数年前からそういう傾向になってしまった。
- ヨーロッパでウケけるようなハッチバックは日本ではウケけないし、アメリカでウケけるようなトラックも日本でウケけない。
- マーケットによって、みんなが乗りたがる クルマは違うんですね。形も違うし、ハードウエアも違うんです。
- ワダ:
- 携帯と一緒でガラパゴス。
- ピーター:
- そういうことですね。
- もう一つ重要なのは、ヨーロッパ人にとってクルマは、“おじいちゃんおばあちゃん、子供を乗せてどこかに行く、買い物に行く”、というただの移動手段だけじゃない。
- 自分が好きな、アクセサリーのひとつなんですね。
- ワダ:
- うん。そういう人が多いんでしょうね。
- ピーター:
- 自分のステータスシンボルでもあるし、乗って楽しい物なんです。一般の日本人で、日産やホンダのようなカーメーカーに入る人でも、オートマのライセンスしか持っていない人が半分以上ですよね。
- 海外のカーメーカーでは考えられないです。カーメーカーでしょう?マニュアル運転できないの?っていう・・・日本はそういう時代になりつつあるんですね。
- ちょっと僕は危機感を感じています。デザインの面でも、ハードウエアの面でも、クルマに関する興味とか、関心が薄くなってきているんですね。
- ワダ:
- ピーターさんがオーストラリア人ということもあると思うんだけど、やはり、海外、外から見てる視点がある。
- 一般の日本人は日本からそんなに出られるわけじゃないから、すごく“国際化している日本”って思い込んでいるんだけど、実は、全然国際化していなくて・・・
- レイチェル・カーソンのセンス・オブ・ワンダーって言葉がありますが、要するに身近の不思議さに対する感性。
- 驚きとか好奇心とかがものすごく弱まっていて、鈍感な人たちになってきていると思うんです。
- ピーター:
- そうです、そう思います。
- ワダ:
- 本来はヨーロッパの人たちのように、クルマって動かすことが面白いとか、喜びを感じるとか・・・そういったことが、クルマだけじゃなくて、例えばこのワインおいしいねって会話が弾むとかね・・・酔えればいいとかじゃなくて。
- ピーター:
- そうね、そう思う。例えば、水割り。
海外では、おいしいウイスキーを水で割らないんですね。ロックか、ソーダで割るとか。せっかくのおいしいものを水で割って飲むなんていうことはしない。
- ワダ:
- 水割りってないんですか?
- ピーター:
- ほとんど飲まないです。ウイスキーはそのままエンジョイするんですね。それが日本を象徴するような感じですかね。
- ワダ:
- 水割りは日本の象徴かァ。なるほどなるほど・・・。
- ピーター:
- 言いにくいけれど、水割りはまずいですよ!・・・笑
- ワダ:
- ハハハ・・・笑
- ピーター:
- ウイスキーっぽい味の水という感じ・・
本当に象徴的な感じがするんです。
- ワダ:
- やっぱりセンスオブワンダーってところをもっと取り戻さなきゃいけないって思うんですよ。
- 僕はよく話すんですけど、もしこの場に縄文人が突然現れたら、みんな驚きの眼差しで注目すると思うんです。
- その人が毛皮じゃなくて、スーツを着てても、なんか得体のしれないオーラが・・・。すごい気迫が出ているんじゃないかと思う。タダ者じゃないような・・・
- それが本来の生命体としての感性だと思うんです。
- でも、近代、現代になって、どんどん生命体としての感性が失われていって、思考とか知識とかで物事が動いていくっていう世界の中で生きていると、本来生き物であるという感覚がだんだん衰えていくというのか・・・
- ピーター:
- 薄まっていくというのかね・・・
- 僕が最近面白いなと思うのは、アメリカ、オーストラリアは日本に比べると新しい国で、日本は歴史が深いし保守的な人も多い国だけど、新しい物が好きですよね。飽きっぽいでしょう?そういう人っていうのが社会を動かしているんですよね。
- ワダ:
- うん。
- ピーター:
- どんどん新しいものを入れよう入れようと・・・
- だからしっかりしたもの、いいものが根付く時間がないんですね。どんどん先に行っちゃう。そういう動きになるので、その中からいいものが生まれてこないっていう感じがするんです。
- アメリカでは日本のブランドっていうことを意識をしない人たちもいるんですよね。
- 例えばレクサスとかインフィニティとかアキュラっていっても、アメリカのブランドだと思い込んでいる人たちも多いですよ。
- なぜ成功したかっていうと、コストがリーズナブル。そしてモノがいい、何よりも壊れない。安全だし、環境性もいいし。
- 例えば、オーストラリアの場合は70%以上の農家がランドクルーザーに乗っているんですね。壊れないから。やっぱりすごく孤立した場所で車が壊れちゃうと、命が危ない。
- ワダ:
- そうですね。
- ピーター:
- だから絶対壊れないような車に乗る。
- 日本のモノは壊れないっていう意識が全世界に広まったので、日本はここまで成功したんだと思うんです。
- これからは韓国が出てきたのでね・・・
- 韓国車は日本と同じでテレビも電話も壊れないですね。
- 値段と性能的には同じだけれど、デザインは随分よくなっているので、日本はそういうところをもっと見てくれないと置いて行かれちゃう・・・それだけを心配しているのね。
- 日本は本当に素晴らしいと思います。
- ワダ:
- そういう危機感はあまり感じられませんよね。
- ピーター:
- 日本のカーメーカーのトップ・・・役員クラスの方と一緒に、ジュネーブのモーターショーで、 KIA(キア)、HYUNDAI(ヒュンダイ)のクルマを二人で見ていたんですけど『かっこいいねー、あんな値段であんなクルマをつくれるなんて、LEDライトもついているし。』
- 『あれいんですよ』って言ったら、『そうですかー』って。
- 彼もデザイナーだからわかるんですね。
- 『僕ら日本デザイナーも頑張らないとな』って・・・それも役員が言っているので、すごく危機感を感じているのね。
- ワダ:
- メーカーとか現場にいればそうだけど、一般市民はそれで責任を負っていないから、Japan as No.1 っていう感覚がまだどこかにあるんじゃないかな。
- ピーター:
- 僕がぜひ輸出してほしいのは日本のホスピタリティ(もてなし)の良さですね。
- この間ニューヨークに10日間いたんだけれど、チップを出せばサービスが良くなるんだけど、日本に帰ってきてまずビックリするんですけど、ホテルなんかでもすごくサービスがいいんですよね。すごく丁寧にいろいろやってくれる。それが日本の良さでもあるんですよね。
- 最近、多くの海外シェフだって、日本のワサビや味醂、醤油を隠し味として使って料理をおいしく作っているんだけど、そういう細かい日本のサービスの良さとか、取り入れられたらすごくいいなと思っているんです。
- 海外はそういう面でよくないところが多いです。
多くの日本人は、本当の情報を知らない
- ワダ:
- もともとピーターさんに興味を持ったのは、クルマを通じて、文化を見られている方だと思ったことと、福島の原発事故の現状について、外国人記者クラブで、福島の現状についての報告会を外国人ジャーナリスト向けに行われてたことがきっかけなんですが・・・
- ピーター:
- いつも誰を呼ぶかということで、もめているんです。
- 放射能のことについて書いた人とか、子供がこれだけ苦しんでいるから、それにはこの人を呼ぼうとか、でもこの人だけだと偏っているとか、反対の意見の人を呼ぼうとか、彼ほど詳しい話にならないんじゃないかとか、本当にいろんな話をするんです。
- 日本はメディアは嘘が多いですね。
- 福島の中から生まれたこともね、僕たち海外ジャーナリストは半分以上が嘘だと思っていますね。だからこそ、本当のことが知りたいので、多くの関係者、例えば、元首相とか、実際原発を作った人たちとか、放射能を調べている人とか、フードセーフティを調べてる人とか、河合弁護士さんとか、できるだけいろんな人を呼ぼうとしているんです。
- 何よりも重要なのは、国民の安全と健康。
でも日本の政府はそういうふうに考えていないですね。それが非常にショックでしたね。
- 日本の政府が安全なエリアは20q以内、いや20qは危ない、30qにしようと言っていたとき、海外のメディアと大使館はもう80qにしていたんですね。
- できることなら危ないから自分の国に帰りなさいと言っていました。僕の友達の多くも、2週間〜1か月間、自分の国に帰ったか、西日本に逃げたか、東南アジアに逃げたか、
- 僕たちは1か月オーストラリアに帰ったんです。自動車業界がストップしちゃったから。
- ワダ:
- うん。
- ピーター:
- 何にもできなかった。試乗会もない、発表会もない、試乗車も借りられない、借りても乗る場所が少ない、ガソリンが買えない。完全にストップした状況だったから・・・。
- それでもみんな1ヶ月くらいで帰ってきたんだけど、食品の安全性が危ない、牛乳も、野菜もという話があったから、西の方から水を頼んで送ってもらったりという人もいましたね。
- 今でも危ないと思っています。
- もう一つビックリしたのは、風によって放射能が北西に流れたにも関わらず、政府がそっち方面に逃げた人たちには知らせなかったこと。だからその人たちは完全に被ばくしてしまったんですね。
- ワダ:
- ええ。
- ピーター:
- そういうことを全然気にしない。
- まだ苦しんでいる何万人もの人たちの面倒を見ない、子供たちの健康を考えない。そういう政府ってあるのかなって。
- いろんな意味でビックリしてるんです。
- 僕たちは海外のジャーナリストとしていろんなことを知らせようとしているんですけど、そういう重要な人たちを呼んでも、日本のメインプレスが全然来ない。
- ワダ:
- 何でですかね?
- ピーター:
- ストップがかかっているから。
- 本当の情報を流してはいけないという。
- 原子力村、あれは力強いですね。政治界、大学、メディアにも関係者がいるんですね。そういう人たちが、本当の情報を流すとパニックになるから、流さないようにしている。
- 今でも多くの日本人が、本当の情報を知らないんじゃないですかね。関心ないしね。
- ワダ:
- 知らないし、関心はどんどん薄れてますね〜・・・
- そういうのを露出すればするだけ、みんな関心持つけど、逆にバラエティ番組が増えるとどんどん忘れられてしまう。
- 最近フェイスブックでも、それを出す人はほとんどいない。一部の人だけだね。僕の周りの人もだんだん語らなくなってきて・・・大丈夫とは思っていないけど、福島への関心事態も薄れている。
- ピーター:
- 今でも危ないですよね。
- 福島にもう一回同じくらいの地震があったら、全部崩れてそこに汚染水が流れたり、使用済み燃料庫から放射能がどんどん出てくるし、そこだけじゃなくて他のところからも漏れてくる可能性があるし。
- 今、汚染瓦礫をいろんなところに持って行っているんですよね。
- それも関心低いですよね。日本の政府がそういう国に育てちゃったんですかね。そういうものに対して関心の低い民族につくっちゃったのかな?
- ワダ:
- もともとそういう体質はあったんじゃないですかね。
- 第二次世界大戦に突入して行く時でも、みんな少ない情報の中で信じていたんですよね。日本は強くて、アメリカに対して宣戦布告するっていう、それに関して国を信じていた。
日本人にしか通じないものが多い
- ピーター:
- 日本の政府、文部省は、英語を教えていないです。本当の英語。
- だって日本人は10年勉強しても、本当に英語を話せるようにならないじゃないですか。
- ちゃんとした英語の会話ができるの日本人は1%しかいない。フィリピン人、韓国人、マレーシア人、アフリカ人だって話せるのに、10年勉強してなぜ簡単な文章も話せないんだろう?
おかしいよね。
- 日本は一つの家族みたいな感じで、見守ってあげたいんです。
- 大きくなって世界のこと、地球のことを知って、英語がちゃんと話せるようになると、日本を出ちゃうんですよね。
- いわゆる頭脳流出を恐れていると思う。だから、文部省はわざとちゃんとした英語を使えるようにしない。
- ワダ:
- 海外の情報を自分で知れるようになるっていうのもありますね・・・。
- ピーター:
- そうBBCやCNNで、本当の情報流しているんだもの。
- ワダ:
- そう考えると、中国はメディア統制があるっていうけれど、日本も十分にしていますからね。
- 日本の場合はカットする前から、流すもの事態を統制しているから、そのままオープンにしているけど。
- 中国なんかも英語を理解できる人が潜在的にたくさんいるから、政府にとっては情報統制が必要なのかもしれないですね。
- 日本の場合、そういうことに対して、何かおかしいぞっていうカンが働くこと自体、潰されている、奪われているっていう気がして。
- ピーター:
- 70年代に大学でいろんな紛争があったでしょう?学生運動とかデモとか。韓国は今もあるよね。今は学生が運動に出ちゃうと、それが経歴に残っちゃうでしょう?だからいい仕事、会社に入れない、そういう時代。
- みんないい子にならなきゃいけないっていうプレッシャーがあって、自然に行動できなくなっちゃってる。
- ワダ:
- でも、日本人はそういうことにすらエネルギーが向かわないというか・・・
- ピーター:
- そうね向かわないね。
- ワダ:
- 今、日本のトレンド、音楽の世界で見ると、ここ数年レコード大賞とっているのはAKBなんですよね。あとモモクロ。
- ピーター:
- 音楽のこと話したら、大変なこと言っちゃうよ(笑)
- ワダ:
- あとEXILEでしょう。だいたい今アイドル全盛みたいになっている。例えば、アメリカだとグラミー賞っていうと、アデルでしょう?
- ピーター:
- あとビヨンセも。
- ワダ:
- 例えば、アデルなんかをとっても、ちょっと太めだけど、ものすごくパワフルな。
- ミュージックビデオ観てもAKBは踊っているけど、アデルは椅子に座って、こう語るようにソウルを唄っていうのか・・・
- そういうのは大人ですよね。
- ピーター:
- 去年、16歳のスウエーデン人の高校生で、向こうの柔道チャンピオンなんだけど。
- 日本に来た時に彼がビックリしたことが二つあって、一つは、テレビCMのほとんどが、子供しか出ていない。もう一つはみんな叫んでいる。
- ワダ:
- 叫んでいる!?
- ピーター:
- そう、みんな大声で叫んでいるようにみえる。何で日本人は叫ばなくちゃいけないの?そうしないと声や意味が伝わらない国なの?って。日本は叫ぶ民族なの?って。
- ワダ:
- 日本のみなさーんっていうやつかな(笑)
- ピーター:
- どのCMみても、みんなだいたい叫んでいるんですよ。
- みんな慣れちゃっているから気にしないけどね。
- ワダ:
- うん、確かにそうだね。今どんなのがあるかなって考えたけど・・・
- ピーター:
- クルマも、ドリンクも、洋服でも、広告だって、テレビだとアメリカの影響があるのかなって思うんだけど、やっぱり“新発売”とか、“新登場”とか常に派手にびっくりさせるようなね。
- そういうのって幼稚だと思う。もっと落ち着いた、大人風なアピールでね。
- ワダ:
- 世界の広告CMフェスティバル見ていても、海外の物はナレーションも内容も、ちょっとウィットとか気付かせるようなのが多いですよね。
- ピーター:
- ルーカスが言っていたのは、叫ばないと売れないというのは、要するに“自分のものに自信がないからだ”って向こうでは思われるって。
- 日本はみんなそうだって、日本に来て1日でそう思ったって。出ている人たちの7、8割以上はティーンエイジャーなんです。大人が出ても生命保険とか、持病とか(笑)
- ワダ:
- あははは・・・・(笑)。確かに、あと入れ歯とか(笑)
- ピーター:
- あとはアデランスとかね(笑)
- ワダ:
- 確かに10代の女の子が多いよね。海外から見ると、より幼く見えるから・・・
- ピーター:
- ルーカスは16歳だったので、AKBとか対象かなって思って見せたんだけど、全然興味を示さない。幼稚すぎるって・・・。音楽センスもないし、これは踊りと呼べないと。
- 彼はヒップポップのダンサーで、スウェーデンではチャンピオンをとったんです。
- ワダ:
- へー、すごい。
- ピーター:
- ダンスは体全体を動かすんだって。
- AKB見てると、この辺(体幹)は動かなくて、手と足しか動かないの。
- ワダ:
- ラジオ体操みたいな感じだね。
- ピーター:
- そう踊っていない。踊っているフリ。日本のアイドルはみんなね。
- ワダ:
- Kポップの人たちは、今すごいですね。
- ピーター:
- 薄型テレビ、スマホ、Kポップ。広がっていますね〜。
- KポップはJポップより遥かににイイ!Kポップの人たちは、Jポップの人たちをはるかにリードしていますよ。
- 日本のJポップは、日本だけで人を雇っているでしょう?でもKポップは、中国やタイに行ったり、才能のある人を引っ張ってきている。踊りも歌も、ちゃんとできるようにしている。
- ワダ:
- 昔、伊丹十三っていう監督がいて、彼が言っていたんですけど、映画において彼が目指していたのは、ハリウッドなんですよね。西部劇をラーメン屋に置き換えて、ラーメン屋が西部劇の舞台になっている。ラーメンをシューッと流して来たりね。
- ピーター:
- 僕が日本の映画で唯一観ていられる映画は、伊丹十三の作品。
他はつまんなくて・・・
- ワダ:
- あと黒澤監督ね。
- ピーター:
- そう。黒澤もユニークだよね。
伊丹十三は俳優もすごくよかったし、台本もよかった。面白い。
- ワダ:
- 彼が言っていたのは、なぜハリウッド映画がヒットするかっていうとアメリカ自体が他民族で、ヒスパニックや黒人も多い。
- 彼は情報共有率っていうことを言っていて、みんなに普遍的に通じるものをベースにして創ると、世界のどこに行っても、理解される。でも日本の場合は、『フーテンの寅さん』とか、知ってます?
- ピーター:
- ああー、寅さんね。
- ワダ:
- 寅さんは、確かに普遍的な映画だけど、そんな風に日本人にしかわからないのが多い。
- 日本人だけに受けるものがすごく多いのね。だから海外に持っていけないんですね。
- ピーター:
- それも日本の象徴的な存在の一つなんじゃないかな。映画とかテレビとか全部。日本人にしか通じないものを作ってる。
- ワダ:
- 日本って、やっぱガラパゴスなんです。
- ピーター:
- そうですね。
マンガとアニメは、ある意味で日本のものを超えていますね。あとゲームもそう。ドライビングゲームとか。アニメはポケモンとか、ドラゴンボール、ピカチュウとか。
- ワダ:
- あれは何で超えたんでしょうね?
- ピーター:
- やはりあれは日本の細かさだ思うんです。
- 映像的に面白いし、ストーリーがあって、アメリカのアニメーションにはない“かわいさ”が入っている。だから子供に受けるんです。でも普通の子どもが、例えばAKBみたいな子供が、海外の大人に通じるかっていうと通じない。
- でもマンガとかアニメは、日本のボーダーレスな感じがしますね。もう世界の物になっちゃっていますよね。ある意味で武道と同じのようなね。フランス人は合気道が大好きだし、柔道もそうですよね。柔道が日本のものを超えたんですよね。
- ワダ:
- そうですね。柔道はフランスの方が競技人口が多い。
- ピーター:
- オリンピックでヨーロッパの人たちが金メダルとった。
- ワダ:
- ルールも今は、国内ルールと違いがありますもんね。
- ピーター:
- ルーカスがそれを見てビックリしたのは、日本は昔からのルールを守ろうとする訳ですから、海外の試合では、技が通じなくなっている。だから負けちゃうっていうんです。
- いくら昔からの歴史やルールを守っても、流れがありますよね。モノが少しずつ変わっていく、新しくなっていくから・・・だから日本の柔道は全然進んでいないって。
- でもアニメはその反対ですね。新しい感じがするし、すごくかわいいし、内容的にもすごく充実している気がするし。
- ワダ:
- でも日本のアニメでもウケるものって、ドラゴンボールとかピカチュウとかポケモンとか・・・
- それだけっていえばそれだけで、アニメ全般がそうではない。切り口として受け入れられているっていう背景に、日本が抜けだすヒントがある気がしますね。
- ピーター:
- そうね、そうだね。
- ワダ:
- 宇宙戦艦ヤマトなんて、海外でウケないでしょう?
- ピーター:
- ウケないね〜。日本のアニメが取り上げるストーリーの内容も、どの国にも通じる話じゃないかなって思います。
- ワダ:
- ドラえもんとかどうなんだろう?
- ドラえもんはアジアでは人気あるけど、ヨーロッパにはあんまりウケないって。
- ピーター:
- そうですね。
- ワダ:
- ハリウッド版の鉄腕アトムが、手塚プロと揉めたっていうのは、向こうでキャラクターをデザインさせたんですよ。
- そうすると、15、16歳くらいのお兄ちゃん少年ロボットのキャラクターになっちゃったんですって。
- でも鉄腕アトムはもっとかわいいのに、それが気持ち悪いって、それで揉めて(笑)結局ハリウッド側は、これじゃないとアメリカではウケないということで、間をとって中間の形にしたんですって。
- “アストロボーイ”って。だから日本のとは違う。
- ピーター:
- なるほどね。
- ワダ:
- 例えば日本だとロボットはASIMO(アシモ)でしょう?
- ロボットが本当にスターウォーズのC3POみたいになったら恐いって。だから、かわいい子供のようなカタチにしているそうです。
- ピーター:
- うん、サイズ的には7歳くらいですよね。
大好きなことは実現できる
- ワダ:
- 最後になりましたが、ピーターさんはオーストラリアから日本来たご縁を教えてもらえますか?
- ピーター:
- 最初に来たのは1979年、大学時代にバイトしてお金貯めて、南半球の夏休みに12月、1月の2か月間いろんな所にホームステイして・・・当時はペンパル(文通)でね。(笑)
- それで青森から九州まで、ペンパルの友達の所に行って泊まったり、日本のこと勉強しました。15歳から高校で日本語を習い始めました。高校に入るとき外国語の選択ができたんです。
- フランス語、イタリア語、ドイツ語、日本語。
- 当時70年代って、オーストラリアと日本は緊密な貿易関係を持っていたんですね。で、日本語勉強すると将来いい仕事に就くじゃないのっていう感じで日本語を勉強し始めたんです。
- 79年に来て、81年SColarshiop(スカラーシップ)受けてきて、83年に交換留学生で来て、で1年間大学に行って
- で、卒業してオーストラリアに帰って、また85年につくば万博に1年間。それで3年間オーストラリアに帰って、88年から日本に来て、当時は85年から88年向こうでメディアコーディネーターみたな仕事をやっていたんですけど。
- 例えば海外、主に日本から来るテレビクルーとか、映画クルーとか、媒体クルーをいろんな所に連れていってコーディネートしました。当時はよく来てましたね。スチュワーデス物語とか、ドキュメンタリーでマイク真木さんが来たりとか、いろんな人が来ました。
- パースだったので、パースは年間日照率が最高で、ほとんど雨が降らないんです。
- 撮影ではすごく便利だし、ちょっと交渉するだけで、許可もいらないし、撮影料なしで当時は簡単に撮影できたんです。
- ある日、日本からリクルートのハウジング関係の雑誌をやっている人が来て、オーストラリアのハウジング情報を調べに来たんです。その時、日本に来て仕事しに来てはどうですか?っていうリクエストがあって。カーセンサーていう媒体があったので、どうですかって言われて。
- 昔から趣味は車だったし、向こうでも日産の510に乗っていたんです。日本に来てはどうですか?って言われて、それで88年に日本に来て、1年くらいカーセンサーの仕事をやって、少しずつ海外の媒体を増やしていって、オーストラリア、イタリア、イギリス、アメリカ、ドイツ・・・一つずつ増やしていって。
- ワダ:
- 次第にモータージャーナリストの道へ行ったという感じですか?
- ピーター:
- そうですね。
車のテストドライブをする上で、いろんなレースサーキットでカーテストのために、走らなければいけない。自分の走りの技術も磨かなければいけない。それで、2000年からレース始めました。筑波サーキットで走って、2009年は、チャンスがあってドイツのニュルブルクリンクでサーキット走って。
- ワダ:
- あそこは世界で一番高速なんでしたっけ?
- ピーター:
- 一番高速ではないけど、一番過酷な長いサーキット。80年前からある山を走っていく20kmの長い北コースと5kmくらいのF1のコースの二つ。
- 耐久レースは二つのコースが並んでいるのをつなげて、延べ25kmのひとつのコースにしているんです。
- 4時間のレースに出て、それから24時間レースに出たんです。
- また出たいと思っているんですけど。
- 最初出た時は、4時間耐久でクラス優勝したんです。
- 24時間レースではクラス4位。
《2010年、ドイツのニュルブルグリング24時間レースに参戦してレクサスIS-Fでクラス4位受賞しました》
- ワダ:
- すごいですね〜。
なんでそんなにうまくなっちゃったんですかね?
- ピーター:
- それも面白いんだけど。
- 24時間ですから、4人でチームを作ったんです。
僕はグランツーリスモっていうTVゲームで、ニュルブルクリンクを覚えたんです。
- ワダ:
- グランツーでですか!? 僕もゲームで走ったことあります(笑)
- ピーター:
- そのゲームで150週くらいまわって、コースを知り尽くしたんです。
- ワダ:
- すごい!
- ピーター:
- 世界一長くて、台数が多いレース。200台くらい。
だいたい3分の1が消えちゃう。
- ワダ:
- 聞いてると、普通にやってるように聞こえちゃうんだけど、すごいことです。。。
- ピーター:
- 大好きなことは、実現していけますよ。。。
- ワダ:
- ほんと、そうですね〜・・・ いやあ、話が尽きないんですけど、
今日は、 いろいろと、僕的に興味深いお話しをいっぱい聞かせてもらいました!
- また、マニアックなところで、いろんなお話し聞かせてください。本当にありがとうございました〜!
- ピーター:
- はい!また、話しましょう〜!
ありがとうございました〜!
- * 制作協力 : 藤田明子
【取材後記】
今回、クエストカフェとしては、少し異色のインタビューだったかもしれない。モータージャーナリストのピーターさんとの出会いは、インタビューの中でも書いたけれど、友人の誘いで有楽町の外国人記者クラブでの福島の原発事故と現状について、外国人ジャーナリストを集めて、専門家の意見を聞こうという会に急遽参加することとなって、そこで主催者のピーターさんと出会うことになった。
モータージャーナリストという肩書きに、原発事故、福島・・・ぜひ、お話を聞いてみたいと思った。今回異色と言ったのは、クエストカフェとしては、スピリチュアリティの要素を期待される向きもなくはないからだけど、それはさておき、ピーターさん自身が、オーストラリア人で、海外へも頻繁に行き来し、外国人や海外のジャーナリストなどとの情報交換も日常的にされている中で、日本にいながら、海外から日本を見ている目線は、とても重要だなと感じた。
日本人の多くは、英語が苦手だ。ネットも、海外の英語のサイトで情報収集する人は世界レベルから見ても、少ないだろうと思う。日本のメディアはかなりコントロールされていると、僕は見ているので、海外がどのように見ているのかを直接知ることはすごく大事だと思う。
これからの時代は、日本という国の中にいても、世界の中の日本、特にアジアの中の日本ということを認識せずには生きられなくなる。世界はそれだけ小さくなった。そして、世界経済は日本の経済ともリンクしているし、輸入価格の値上がりや輸入食品、食材の安全性、特にいつも身につけている衣類や電気製品など、あらゆる面で、アジアや海外は身近にあるもの。
そういうリアリティをあらためて認識する意味でも、今回のインタビューはとても興味深かった。
それにしても、活動的なピーターさん、ぜひ、お気をつけて、これからもレース活動楽しんでくださいね!